2026年8月末の横手市の住民基本台帳人口は77,653人。

同年度の当初予算は、一般会計576億7,100万円、特別会計252億6,290万円、企業会計182億5,500万円で、全会計合計は1,011億8,890万円となっている。

人口8万人を下回る市で、年間1000億円規模の会計が動いている。

ただし、この数字を人口で割って「市民1人あたり約130万円の税負担」と読むのは誤りだ。

全会計には国民健康保険、介護保険、病院、水道、下水道などが含まれ、財源も市税だけではない。

人口減少下の財政で見るべきなのは総額より、何を減らせて、何が別の費用へ移り、どの財源で支えているかである。

2026年度の全会計は1,011億8,890万円

会計当初予算前年度比
一般会計576億7,100万円1.9%減
特別会計252億6,290万円1.2%増
企業会計182億5,500万円5.0%減
合計1,011億8,890万円1.7%減

特別会計には国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険などが含まれる。

企業会計には病院、水道、下水道が含まれる。

会計同士は目的も収入構造も違うため、全会計合計を「市が自由に使える1000億円」とは扱わない。

一般会計でも、自主財源は31.3%

2026年度当初予算の一般会計では、自主財源が31.3%、依存財源が68.7%と整理されている。

地方交付税は205億3,100万円で、一般会計歳入の35.5%。

市税は91億6,318万円で、15.8%だった。

地方交付税の額が市税より大きい。

これを「国がずっと不足分を埋めてくれるから大丈夫」とは読まない。

地方交付税は人口だけで単純比例する交付金ではなく、人口・面積等の測定単位と各種補正を使って基準財政需要額を算定する制度である。

また、2070年まで現行制度が同じ算定方法で続くと仮定もしない。

一方で「人口が半分なら交付税も半分」と単純計算するのも違う。

人口が減っても、全部の費用は同じ割合で減らない

減らしやすいものと、減らしにくいものがある。

学校や公共施設は機能を集約できれば建物数を減らせる。

一方、道路、橋、水道管、下水道管、消防、防災、除雪などは、居住地が広く残る限り人口と同じ速度で減らしにくい。

高齢化では、人口総数が減っても医療・介護需要が同じ割合で減らない時期もあり得る。

だから長期財政を人口比だけで縮めない。

「施設を減らした=その分だけ安くなった」でもない

学校を統合すれば建物や人員の一部をまとめられる。

その一方、子どもを統合先へ運ぶ必要がある。

2026年度当初予算では、スクールバス運行管理費266,579千円、車両購入費50,859千円が計上されている。

この金額をすべて学校統合の追加費用とは扱わない。

既存の遠距離通学なども含むからだ。

ただし、建物を減らした後に交通費が残る構造は確認できる。

財政評価では、

廃止した施設の維持費
- 消えた費用
+ 統合先の改修・増築
+ 通学・移動
+ 解体・跡地管理

まで追わなければ純削減額は分からない。

水道共同化でも「自前設備を減らす」と「費用ゼロ」は違う

山内黒沢地区では、横手市が老朽化した浄水施設を単独更新せず、岩手県西和賀町の浄水施設を共同利用する方式へ移った。

市は単独更新と比べて40年間で約2億円の経費節減を試算している。

一方、2025年度・2026年度の水道事業会計予算では、原水及び浄水費の負担金説明欄に「山内黒沢受水負担金」が残っている。

合算科目なので山内黒沢単独額は分離できない。

ここで重要なのは、

固定施設を自前で持つ費用を減らし、接続設備と継続利用負担へ費用構造を変える

という点である。

人口減少期の財政では「何円削減したか」だけでなく、何の固定費を何の変動・共同負担へ置き換えたかを見る必要がある。

基金と市債を見ると、2030年までの余力は無限ではない

2024年度決算で、財政調整基金と減債基金の年度末残高合計は約136億5,000万円だった。

横手市の2026〜2030年度財政計画では、2030年度末の同合計を45億9,000万円と置いている。

これは将来の確定残高ではなく計画値である。

同じ財政計画では、地方債残高は2024年度決算619億6,900万円、2025年度見込652億3,900万円、2030年度計画515億7,600万円となっている。

実質公債費比率は2024年度8.6%、2030年度計画11.1%。

これも2030年の確定結果ではない。

計画値が示すのは、今後の投資や返済を進める中で、基金・市債・公債費を同時に管理しなければならないという行政側の前提である。

基金残高だけを見て「まだ136億円あるから余裕」とも、市債残高だけを見て「600億円あるから危険」とも判断しない。

財政余力は一つの残高では測れない

長期で見るなら、少なくとも、

  • 基金残高
  • 地方債残高
  • 実質公債費比率
  • 経常的な収支
  • 普通建設事業
  • 更新が必要な資産
  • 国・県補助
  • 地方交付税
  • 水道・下水道・病院など企業会計

を一緒に見る。

同じ100億円の基金でも、近い将来に大型更新が集中する市と、更新負担が小さい市では意味が違う。

地場企業には「縮退を実装する公共需要」が残る

人口減少で新設需要が減っても、公共発注がゼロになるわけではない。

横手では道路橋点検、衛生施設の設備更新、下水関連調査など、既存ストックを維持する案件が年度をまたいで確認できる。

公共施設を減らす場合にも、調査、設計、解体、機能移転、残す施設の改修、跡地整備が発生する。

地場企業から見ると、

新しく増やす仕事

から、

止めない・直す・つなぐ・減らす仕事

へ公共需要の構成が移る可能性がある。

ただし公共需要があることと、個別企業が受注できることは別である。

技術者要件、入札資格、案件大型化、人手不足も制約になる。

地元就職者には、自治体財政が雇用と生活の両方へ効く

自治体財政は税金だけの話ではない。

建設、設備、廃棄物、福祉、医療、指定管理、IT、物品などでは自治体支出が地場企業の仕事へつながる。

同時に、住民としては、

  • 学校
  • 公共交通
  • 除雪
  • 医療・介護
  • 上下水道
  • ごみ

のサービス水準や負担にも関係する。

25歳で横手へ就職して69歳まで住むなら、財政は勤務先と生活条件の両方を通じて効いてくる。

2050年・2070年の予算額は人口比で推計しない

2026年度一般会計576億7,100万円を、2050年人口比や2070年人口比で機械的に縮小しても意味は薄い。

物価、賃金、交付税制度、医療・介護、施設再編、広域化、災害、国の補助制度が変わるからだ。

50年先に追うべきなのは総額より、

  • 自主財源 / 依存財源
  • 市税 / 地方交付税
  • 人件費 / 扶助費 / 公債費
  • 基金 / 市債
  • 維持更新 / 新設 / 解体 / 統合
  • 直営 / 委託 / 広域共同負担
  • 一人あたりではなくサービス単位の原価

になる。

現時点の結論

人口8万人弱で全会計1000億円規模という数字だけでは、横手市の財政が大きすぎるとも、小さすぎるとも言えない。

現在確認できるのは、一般会計の約7割が依存財源で、地方交付税の比重が大きい一方、基金・市債を使いながら施設・インフラ再編を続ける計画になっていることだ。

そして縮退は、費用を単純に消すだけではない。

学校統合後には移動、水道共同化後には利用負担、施設廃止後には解体・跡地管理が残り得る。

だからこのサイトでは、人口減少期の財政を「いくら削減したか」だけでなく、費用がどこからどこへ移ったかで追う。

Sources

  • yokote-budget-r8: 横手市「横手市の予算 令和8年度」
  • yokote-budget-overview-r8: 横手市「令和8年度当初予算の概要」
  • yokote-population-r8: 横手市「横手市の人口(令和8年度)」
  • yokote-financial-plans: 横手市「横手市の各種財政関連計画」
  • yokote-financial-plan-r8-r12: 横手市「令和8年度〜令和12年度財政計画」
  • yokote-fiscal-results-r6: 横手市「令和6年度決算」
  • yokote-financial-health-r6: 横手市「令和6年度財政健全化判断比率」
  • yokote-public-assets-plan: 横手市「横手市財産経営推進計画」
  • yokote-school-bus-r8-budget: 横手市「令和8年度スクールバス関係予算」
  • yokote-water-r7-initial-budget: 横手市「令和7年度水道事業会計当初予算」
  • yokote-water-r8-initial-budget: 横手市「令和8年度水道事業会計当初予算」