横手で家を買うとき、「水洗トイレか」だけでは足りない。

その家の生活排水が公共下水道、集落排水、合併処理浄化槽のどれで処理されるのかによって、将来負担する費用と維持の仕組みが違う。

人口が長期的に減る横手市では、この違いが今後さらに重要になる。

横手市は全部を下水道で処理する前提ではない

横手市の生活排水処理構想では、公共下水道と合併処理浄化槽を経済比較し、集合処理が有利な区域と個別処理が有利な区域を分ける考え方を採っている。

比較対象には、処理場や管渠の建設費だけでなく、維持管理費や更新費も含まれる。

人口減少と少子高齢化が進む地域では、家が少なくなった場所まで新たに管を延ばすことが常に合理的とは限らない。

一方、住宅が密集する場所では、個別の浄化槽を一軒ずつ維持するより集合処理の方が合理的な場合もある。

つまり問題は「下水道と浄化槽のどちらが優れているか」ではない。

その人口密度と既存設備で、どちらの方式を維持する方が負担が小さいかになる。

2026年にも公共下水道の整備は続いている

人口が減っているからといって、横手市の公共下水道が一律に縮小しているわけではない。

2026年2月の公共下水道事業計画変更では、横手処理区の汚水に関する区域面積を2,076.4haから2,090.3haへ変更し、完成予定年月日を2026年3月31日から2031年3月31日へ延ばしている。

したがって、現時点では「人口減少によって下水道区域を全面的に縮めている」とは言えない。

既存市街地や整備が合理的な場所では、今も下水道整備が続く。

長期的には、区域を広げる判断と、個別処理へ切り替える判断が同じ市内で並行する可能性がある。

一方で、処理場は集約する計画になっている

管路を整備する区域がある一方、処理拠点は減らす方向が置かれている。

2023年改定の下水道事業経営戦略では、計画上の14処理区・処理場を2025年度末までに11、2035年度末までに10へ統合する目標が示されている。

ここで注意が必要なのは、この「14→11→10」と、2025年3月時点の市管理下水処理施設一覧に載る10施設をそのまま比較しないことだ。

経営戦略は「処理区・処理場」という計画上の集計で、施設一覧は市管理施設の掲載数である。県管理の横手処理センターも別に扱われており、集計定義が同じとは確認できない。

数字が同じ10でも、「2035年度目標をすでに達成した」とは書けない。

人口減少下の再編を見るには、施設数だけでなく、どの処理区をどこへ接続し、旧施設が実際に止まったかを案件ごとに追う必要がある。

大森では、施設本体ができても旧3施設を止めるところまで進んでいない

大森地区は、集合処理の統合が計画どおり一直線には進まないことを示す実例になる。

大森、十日町、本郷の処理機能を新しい大森浄化センターへ集約する計画では、2023年度に統合処理施設の本体工事完了が記録されている。

しかし2024年度の上下水道部事業概要では、新施設はまだ供用開始しておらず、漏水修繕後も既存施設を継続運転していたことが確認できる。

さらに2025年9月には、大森・十日町・本郷の旧3処理施設を廃止するための条例改正案が市議会で否決された。

この議決結果だけから、否決理由を一つに決めつけない。

2026年3月19日には、大森浄化センターに関する地質調査業務委託も発注されている。

ここから確認できるのは、次の段階が別々だということだ。

統合方針を決める

新施設を建設する

必要な補修・技術確認を終える

新施設を供用開始する

旧施設を止める

旧施設を廃止・処分する

2023年度に本体工事が終わったことを、そのまま「統合完了」とは呼べない。

施設統合が長期的に合理的でも、移行中には旧施設の運転、補修、調査、制度変更などが重なる可能性がある。

この詳細は別記事「横手市の下水道は、人口減少で具体的にどう再編されているのか」で案件単位に追っている。この記事では、住宅の処理方式を考えるうえで、現在の方式が将来も同じ設備構成で続くとは限らないという実例として扱う。

市は個別処理区域の浄化槽にも補助している

2026年度の横手市では、下水道事業区域と集落排水事業区域を除いた区域で、合併処理浄化槽の設置費に補助がある。

人槽補助上限額
5人槽414,000円
7人槽474,000円
10人槽660,000円

さらに、市の生活排水処理構想で個別処理と判定された区域などでは10万円が上乗せされる。

これは、浄化槽が下水道完成までの一時的な代用品というだけではなく、地域によっては長期的な生活排水処理方式として位置付けられていることを示す。

地元就職して家を持つなら、購入前に処理方式を見る

25歳で横手に就職し、30代で住宅を取得した場合、その住宅には数十年住む可能性がある。

そのとき確認したいのは現在の売買価格だけではない。

  • 公共下水道区域か
  • 集落排水区域か
  • 合併処理浄化槽か
  • 下水道なら現在の使用料はいくらか
  • 浄化槽なら保守点検、清掃、法定検査にいくらかかるか
  • 古い単独処理浄化槽や汲取り便槽が残っていないか
  • 今後の接続・転換計画があるか

同じ市内でも、住宅を維持する費用構造が異なる。

住宅ローンだけ比較しても、横手での長期生活費は分からない。

さらに、現在「集落排水だから」「公共下水道だから」と設備構成を50年間固定して考えない方がいい。

大森のように処理拠点を統合する計画があれば、家庭側の排水サービスを維持したまま、行政側の処理方法が変わることがある。

人口が減るほど「管をつなぐか、個別設備を置くか」の判断が重くなる

人口が多く、住宅が密集していれば、一本の管路を多くの利用者で共有できる。

人口が減り、住宅が疎らになると、同じ距離の管路を少ない利用者で支えることになる。

個別処理なら長い管路を維持する必要はないが、各住宅に浄化槽があり、それぞれ保守点検・清掃・検査が必要になる。

どちらも無料にはならない。

50年先を考えるときに見るべきなのは、単純な人口だけではなく、人口がどこに残るかになる。

中心部へ住宅が集まるのか、集落が広い範囲に点在したまま残るのかで、合理的な生活排水処理の形は変わる。

地場企業には、縮退の過程そのものが仕事になる

人口が減ると、下水道や浄化槽に関わる仕事がすぐなくなるわけではない。

むしろ当面は、

  • 既存下水道施設の維持・更新
  • 管路の修繕
  • 施設統合
  • 排水設備工事
  • 浄化槽設置
  • 保守点検
  • 清掃・汚泥収集運搬
  • 既存便槽から合併処理浄化槽への転換

のような仕事が残る。

大森の事例が示すように、統合案件では新設工事だけで終わらず、補修、調査、旧施設の継続運転、切替まで複数工程が発生することもある。

ただし、新設中心の市場と維持管理中心の市場では必要な人員・設備・収益構造が違う。

地場企業が50年先まで事業を考えるなら、「人口が減るから市場がなくなるか」ではなく、新設から維持・統合・個別処理へ仕事の構成がどう変わるかを見る必要がある。

2030年、2040年、2050年に追うもの

このサイトでは、下水道と浄化槽について次を継続して追う。

  • 公共下水道の処理区域人口
  • 下水道管路延長
  • 集落排水施設数
  • 浄化槽区域と設置基数
  • 下水道使用料
  • 下水道事業会計の収支
  • 処理施設の統廃合
  • し尿・浄化槽汚泥の発生量
  • 収集運搬体制
  • 浄化槽補助制度
  • 統合施設の供用開始日
  • 旧処理施設の停止・廃止時点

人口が減る速度より、処理施設・管路・収集体制を組み替える速度が遅ければ、一人あたりの維持負担が重くなる可能性がある。

逆に、施設統合や区域見直しが進めば負担を抑えられる可能性もある。

ただし大森のように、統合計画があっても移行が長期化する場合は、その期間の重複負担も別に見る必要がある。

古い構想を現在の決定事項として読まない

横手市生活排水処理構想は、現在の区域選定思想を理解するうえで有用だが、中期計画は2016年度から2025年度、長期計画は2016年度から2035年度を対象とする資料である。

2026年以降の具体的な事業判断は、2026年の公共下水道事業計画、2023年改定の下水道事業経営戦略、最新の予算・決算などで確認する必要がある。

古い計画に書かれた区域や数値を、そのまま現在の決定事項として扱わない。

同様に、経営戦略の統合目標を実績施設数とみなしたり、本体工事完了を供用開始とみなしたりしない。

Sources

  • yokote-sewer-strategy-2023: 横手市「横手市下水道事業経営戦略(令和5年3月改定)」
  • yokote-public-sewer-plan-change-r8: 横手市「横手市公共下水道事業計画の変更」
  • yokote-wastewater-concept-2016: 横手市「横手市生活排水処理構想」
  • yokote-septic-subsidy-r8: 横手市「浄化槽の設置に対する補助金」
  • yokote-sewer-fee-r8: 横手市「公共下水道使用料・集落排水施設使用料」
  • yokote-sewer-analysis-r6: 横手市「水道事業・下水道事業の経営比較分析表」
  • yokote-sewer-r5-department-summary: 横手市「令和5年度 上下水道部事業概要」
  • yokote-sewer-r6-department-summary: 横手市「令和6年度 上下水道部事業概要」
  • yokote-omori-ordinance-r7: 横手市議会「令和7年9月定例会 議案第99号」
  • yokote-council-news-85-omori: 横手市議会「横手市議会だより No.85」
  • yokote-omori-geotech-r8: 横手市「横手市大森浄化センター地質調査業務委託」