横手で就職先を探すとき、その会社が5年後、10年後も同じ経営体制で残っているとは限らない。
人口減少地域では、顧客が減ることだけでなく、経営者そのものが引退することが企業存続の条件になる。
横手市も、第2次商工業振興計画で事業承継を商工業の主要課題として扱っている。
重要なのは、横手市について「後継者不在企業は何割」と断定できる最新の公開値が、現時点で確認できていないことだ。
一方で、市は2025年度に支援事業者を対象とした事業承継の実態調査を行い、2026〜2030年度の計画でも承継ニーズの早期把握・分析を続ける方針を置いている。
つまり、後継者不足を一般論として語るだけでなく、行政自身が企業の承継状態を継続して把握する段階へ入っている。
2016年から2021年に民営事業所は419減った
横手市の第2次商工業振興計画によると、2021年の民営事業所数は4,189事業所、従業者数は36,573人だった。
2016年と比べると、
- 事業所数: 4,608 → 4,189、419減
- 従業者数: 37,368 → 36,573、795人減
となっている。
事業所数は約9.1%減った一方、従業者数の減少率は約2.1%にとどまる。
この数字だけで、419事業所がすべて後継者不足で廃業したとは言えない。
廃業、統合、移転、業況、経営者年齢など複数の要因があり、理由別の内訳は別途確認が必要になる。
ただし、市自身が「市内の事業者の多くは経営者の高齢化に伴い世代交代の時期を迎えている」と整理し、事業所の減少を防ぐため事業承継が必要だとしている。
小売・建設・製造で事業所数が減っている
2016年から2021年の変化を見ると、主要産業でも事業所数は減っている。
| 産業 | 2016年 | 2021年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 卸売業・小売業 | 1,325 | 1,133 | -192 |
| 建設業 | 516 | 461 | -55 |
| 製造業 | 381 | 342 | -39 |
| 宿泊業・飲食サービス業 | 511 | 438 | -73 |
これは「横手の会社が全部なくなる」という話ではない。
同じ期間に増えた産業もあり、企業規模の集約が進めば事業所数が減っても雇用や生産額が同じ割合で減らないこともある。
地元就職者にとって重要なのは、会社数の総数より、自分が働く業界で企業の退出と集約がどう進むかである。
2025年度、市は支援事業者に事業承継の実態調査を行った
横手市商工労働課の2025年度実績資料では、支援事業者を対象に事業承継に関する実態調査を実施したことが記録されている。
ここは扱いに注意が必要だ。
現時点で確認できる公開資料からは、
- 調査対象数
- 回答数
- 後継者が決まっている企業数
- 後継者不在率
- 廃業予定企業の割合
- 親族・従業員・第三者承継の内訳
を確定できていない。
また「支援事業者を対象」と書かれているため、市内全企業を対象とした悉皆調査だとも扱わない。
したがって、このサイトでは調査を実施した事実だけを保持し、「横手の企業の○割が後継者不在」という数字へ変換しない。
それでも意味はある。
市が事業承継を相談窓口だけで扱うのではなく、どの企業に承継ニーズがあるかを把握しようとしていることが確認できるからだ。
2026〜2030年度も「ニーズの把握と分析」が政策課題として続く
第2次横手市商工業振興計画では、事業承継について、ニーズの早期把握・分析、相談対応、関係支援機関との連携などを今後の取組として位置付けている。
計画に書かれたことを成果とは扱わない。
ただ、2025年度に調査を実施し、その次の5年間でも把握・分析を続けるという流れは、事業承継が一度きりの啓発テーマではないことを示す。
今後この記事で重要になるのは、率そのものより、
実態把握
↓
相談・支援
↓
承継方法の選択
↓
実際に承継・譲渡・廃業したか
を追えるかどうかになる。
行政の「相談件数」だけで終わらず、その後に企業・雇用・技能が残ったかまで観測したい。
就職先を見るとき、社長の年齢は意外に重要
20代の求職者が会社を選ぶとき、給与、休日、仕事内容、勤務地は当然見る。
地方の中小企業では、それに加えて次も確認する価値がある。
- 経営者の年齢
- 後継者が決まっているか
- 親族承継か、従業員承継か、第三者承継か
- 経営者が変わっても続けられる顧客基盤があるか
- 特定の人に技術・営業・見積りが集中していないか
- 若手に権限移譲しているか
- 設備更新を続けているか
求人票には通常書かれない。
しかし25歳で入社して10年働くなら、経営者が65歳の会社と40歳の会社では、入社後に起き得る経営イベントが違う。
事業承継は経営者だけの問題ではなく、従業員のキャリアにも直結する。
後継者がいない会社は、必ず廃業するわけではない
横手市の事業承継相談窓口は、親族への承継だけでなく、役員・従業員への承継、後継者不在、自社譲渡、M&Aも相談対象としている。
つまり選択肢は、
- 親族内承継
- 従業員承継
- 第三者承継
- M&A
- 廃業
に分かれる。
人口減少地域では、「子どもが継がない=会社がなくなる」と決まっているわけではない。
買い手や経営人材を地域内外から見つけられる会社なら存続できる可能性がある。
逆に、経営者個人の資格・人脈・技能だけで成立している会社は、売上が残っていても引き継ぎにくい。
地場経営者は、売上より先に人の承継を見る必要がある
人口が減る中で事業拡大を考える経営者には、顧客獲得だけでなく人材の時間軸が必要になる。
例えば10年後に、
- 現在50代の管理職は何歳か
- 有資格者は何人残るか
- 見積りができる人は何人いるか
- 顧客折衝できる人は誰か
- 現場を任せられる人は育っているか
- 自分が倒れたら経営判断できる人がいるか
を考える。
地方企業の承継は株式や代表印だけの引継ぎではない。
仕事の取り方、技術、資格、行政との関係、顧客との信用まで移す必要がある。
横手市も、事業承継の課題として後継者育成、資金確保、取引先との関係構築などを挙げている。
企業が減ることは、若手には機会にもリスクにもなる
会社数が減ると、転職先の選択肢が減る可能性がある。
これは地元就職者にとって明確なリスクになる。
一方、後継者不足の会社が増えるなら、若手・中堅社員が経営側へ移る機会や、第三者承継で既存事業を取得する機会も生まれる。
新しくゼロから起業する以外に、既存の顧客・設備・従業員を引き継ぐという選択肢がある。
ただし「後継者不足だから誰でも会社を安く買える」とは言えない。
債務、設備更新、顧客集中、許認可、従業員、土地建物などを含めて判断する必要がある。
2070年まで同じ会社名が残るかは予測しない
50年シナリオで、個別企業の存廃を予言することはしない。
代わりに、横手の企業基盤について次を追う。
- 民営事業所数
- 従業者数
- 産業別事業所数
- 企業規模
- 経営者年齢に関する統計
- 休廃業・解散
- 事業承継実態調査の結果
- 事業承継相談件数
- M&A・第三者承継の支援状況
- 実際の承継・廃業件数
- 新設事業所・創業
- 若年者の地元就職率
企業数が減っても、雇用・付加価値・技術が残るなら、地域産業は別の形で維持される可能性がある。
逆に、黒字でも引継ぎ手がいない企業が退出するなら、人口減少以上の速度で地域の仕事の選択肢が減る可能性がある。
現時点で分からないこと
横手市について、後継者不在企業が市内企業の何%を占めるかという最新の公表値は、今回確認した公開資料からは確定できていない。
2025年度の実態調査は実施済みだが、現在確認している資料から調査結果の詳細を市内企業全体の割合として使うことはできない。
次に必要なのは、実態調査の集計結果、相談件数、第三者承継・従業員承継の成立件数、休廃業との接続である。
割合が確認できるまでは「横手の企業の何割が後継者不在」といった数字を置かない。
Sources
yokote-business-succession-desk-r8: 横手市「事業承継の相談窓口」yokote-commerce-industry-plan-r8-r12: 横手市「第2次横手市商工業振興計画」yokote-commerce-policy-r7-result: 横手市「令和7年度 商工観光部商工労働課の方針書」